『さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生』読了

オウム・サリン事件の実行犯、豊田被告の東大時代の学友、伊東さんによる、この10年余りの豊田被告とその回りの状況を、手記のような形でまとめた本。

いかにしてオウムは信者を獲得していったのか、なぜ超高学歴の人間を信者にする必要があったのか、そしてオウムテロ事件は一部の人間の暴走なのか、それともいつでも、誰にでも起こりえる普遍的な問題なのか。こういった問題提起に対して、様々な観点から答えを出そうとしています。

一番重要な、「誰にでも起こりえるのではないか?」という疑問に対し、起こりえる、というのが伊東さんの考えで、それを未然に防ぐには、裁判において法倫理に基づいて極刑にするのではなく、被告人たちからありのままに語らせ、社会全体で問題意識を共有しなければならない、と結論づけています。

それが題名に繋がるわけ。黙して語らず、というのがかつての大英帝国の海軍のモットーであり、それはそのまま日本でもままある現象ですが、それでは真の問題解決にはならない、というのが伊東さんの主張なのです。読んでいて非常に共感を覚えました。

多少、話があっちこっちに飛ぶので混乱するところもありますが、オススメな本です。

さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生
伊東 乾
集英社 (2006/11)
売り上げランキング: 33968
おすすめ度の平均: 3.5
4 「筋書きの中にいる方が楽なんだよ」って戒めは皆に向けられている
4 村上春樹のいわゆる「オウム本」よりも
5 オウムの解脱を完全理論化