香港の文化

先日香港科技大学の1年生Yukoさんと話していた時、「香港は文化がないから…」という話が出てきました。

星野博美さんの本、『転がる香港に苔は生えない』にも香港は文化砂漠、という記述がありましたし、香港人の友達も文化がないと言うことを自虐的に言っていました。

が、僕はちょっと違うなーと感じています。文化というものを、長い歴史という点でとらえるなら、確かに香港には文化はないのでしょう。でもそれを言うならアメリカも同じで長い歴史があるわけではないです。でもアメリカに文化がない、という人はいないでしょう。

中国の長い歴史に比べれば確かに香港には昔からの建造物も史書のたぐいもありません。しかし香港には香港独自の文化がちゃんとあると思うのです。文化という言葉が適切でないなら慣習、行動様式と言っても良いかもしれません。例えば医食同源。今の10代20代前半の若者達は違うかもしれませんが、僕の香港人同級生達なら、食の組み合わせや、「熱」と「冷」の食べ物など、よく知っています。

また風水もその一つ。香港に初めて来られた方々は香港島にある奇妙な形をした高層ビル群に驚かれると思いますが、大概は風水の考えを元に、気の流れを考慮して建築されているため、日本の常識では考えられない形になっているのです。最新の技術で作られている超高層ビルが風水に基づいている。これは十分に「香港文化」だと思います。

また以下のblogに「ビジネスの場に真剣に風水師がコメントし、それを真剣に新聞が載せるあたりは、風水が香港のビジネスに完全に定着していることを示していて大変興味深いです。」というコメントがありました。

香港徒然草211:まもなく旧正月!香港の景気やいかに?! - 香港徒然草

ビジネスの世界でも風水は完全に定着しているようです。これもまた一つの文化なのではないでしょうか。昔からあるモノ、形に残っているモノだけが「文化」なのではなく、無形物も(わかりにくいけど)文化の一つ、だと思うのです。

無形文化という観点では、映画や音楽も香港独自の文化として挙げられるでしょう。人口が700万人に満たないこの小さな都市国家から、日本・韓国を除くアジア全域に羽ばたくスター達が生まれるのも、香港の芸能文化の成熟さを示していると思います。

香港同様、中国系が人口の主たる構成員である都市国家、シンガポールからは、若干の歌手は出てきていますが、香港に比べるまでもありません。面白い違いです。