ゲストスピーカー

今日の午前中は久しぶりにGIFTのオフィスを訪ね、『Koji Box』の打ち合わせ。これは1月のYLPにて作ったビジネスプランの中で用いた、ツールキットです。

このツールキットのブラッシュアップをしたい、ということで在香港YLP参加者にボランティア募集されたので、立候補してみました。

すると、単にブラッシュアップするだけではなく、ケーススタディなどをつけて学術論文として発表したい、という意向らしく、かなり真剣な話になってました。そのうちこのblogでもご紹介しようかな、と思っていたのですが、まずは論文が出来上がった後、お知らせしようと思います。翻訳するのは面倒なので多分英語のままで…。

このミーティングのため11時から12時半まで金鐘。14時から『Doing Business in China』の授業なのですぐにとって返して、速攻お昼ご飯を食べてクラスルームへ。

すると見慣れない女性が交換留学生と話していました。誰だこのおねえちゃん、くらいに思っていたのですが、実はThe China Priceの著者、Alexandra Harneyでした。びっくり!シラバスちゃんと読んでなかったのですが、授業の最初からゲストスピーカーとして呼ぶ予定になっていた模様…。

今日はこの本持ってこなかったので、非常にショック。他の学生達はサインもらってました…。

彼女はblogも書いています。頻繁に更新されています。

THE CHINA PRICE

もちろん僕もこの本は買って読み終えています。感想はまた別途。

The China Price: The True Cost of Chinese Competive Advantage
Alexandra Harney
Penguin USA (P)
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日本語訳はこちら。邦題はかなり過激です。

中国貧困絶望工場 「世界の工場」のカラクリ
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おすすめ度の平均: 4.5
4 邦題は内容にミスマッチ
4 知らないままでは済まされない
5 よくわかる
5 これから先
5 便利さの裏に潜む現実−幻想としての世界の工場が持つ現実−

想像していたよりもずっと若くて(といっても僕よりちょっと若いくらい)美人さんだったので、著者とは思いませんでした。ちなみに彼女は高校時代から日本語を学んでおり、日本にてFinancial Timesの記者としても働いていました。その後普通話を学んで香港でも同様に記者として働き、現在は中国におけるアウトソース、労働問題などを中心にアジア中を飛び回っています。

ゲストスピーカーとして、本の内容を元に、そこに載っていない話、載せられなかった話、出版後のアップデートなどを話してくれました。

この本の中で僕が一番印象に残っているのは、ハードカバー版には無くてソフトカバー版で追加された『The Girls of Room』という章。この章はLuyuanという江西省から出てきた女の子の物語。彼女が深圳に出てきていくつかの工場を転々としたあと、工場生活から抜け出て不動産屋に勤務し、最後は上海の街角でフルーツジュース屋で働くところまでを描いています。

ここで描かれている内容が10年前だったらまだわかるのですが、ほんの数年前の出来事。未だにそういう環境で人生を過ごしている人々がいる、ということに驚きました。Luyuanは非常に聡明でラッキーだったから工場生活から抜け出すことが出来ましたが、そういう人は一握りでしょう。

Alexは今でも彼女とは仲良しで昨日も深圳で会ってきた、と言っていました。懐に潜り込んで信頼してもらったからこそ、多くの中国人達からその労働現場の実態について詳細に書き記すことが出来たのでしょう。

ちなみにスピーチの後、教授が「中国語版も出てるの?」と聞いたところ、「ええ、台湾では大ヒットしてます」と言って、クラス爆笑。これは中国では出版できないでしょうね。

また教授が「日本語版もあるんだよね」と言って僕を見たので、「知ってますよ。タイトルがかなり刺激的だけど」と言ったら、彼女が日本語でタイトルを言ってくれて、その上で敢えて英語に翻訳してみんなに伝えてこれまた爆笑。彼女自身が選んだわけではない、と言っていましたが。

この日本語版のタイトル、Alexが知っているかどうかは知りませんが、明らかに鎌田慧の『自動車絶望工場』をぱくってますよね…。もちろん僕は大学時代に読んでます。この本、今読んでも色あせてない潜入ルポだと思います。

自動車絶望工場―ある季節工の手記 (講談社文庫)
鎌田 慧
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