『ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場』読了

ハーバードビジネススクール(以下HBS)出身の岩瀬大輔さんのクラスメートが記した、HBSでの生活を綴った本です。

岩瀬さんには2007年にMBA友の会主催で壮行会をした時に来て頂いたので、彼の著書は読んでいました。

この本、最初は「Eric Petersonのケースも使うんだ。うちと同じ…っていうかうちがHBSのケースを使っているのだから当たり前か」とか「おお、利豊(Li&Fung)を扱うだけじゃなく、マネジメントトップのVictor Liをビデオ会議で呼び出すだなんて、さすがHBS(VictorはHBS卒業生)」とか「ファイナンスに興味がないとHBSでもインターン捜しは厳しいんだ」という、表面的な共感が多かったのですが、読み進めるうちに深く共感。

著者同様、僕も30歳を過ぎてからビジネススクールに進み、ファイナンスには全く興味が無く、またキャリアチェンジをするのが目的でビジネススクールに進んだにもかかわらずそれが非常に難しいと、入学後にわかった口です。

就職先として多くの学生を受け入れるのが投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル等金融業界であり、次がコンサルティング。またこれらの職種はどこも「経験者求む」。つまりキャリアチェンジというのは自分たちが思うほど、そして大学のキャリアオフィスが言うよりも遙かに難しいという現実があります。

そうした中で、自分は他のクラスメートとは進んできた道もこれから進むべき道も違うんだ、と信念を持ち続けるのは容易ではありません。著者はその誘惑に負けてマッキンゼーの面接を受けたことを記していますが、僕もとにかくえり好みしている場合じゃないと思い、大手金融機関から小さなアセットマネジメントまで、数は多くないものの、いくつか応募したりしたこともあります。

うちの大学は著者の観たHBSと比べるとクラスメートの仲は非常に良く、よくまとまっていると思いますが、大きな違いはその程度で、著者による様々な批判や問題が起こる状況は似ているなと思いました。きっとこれはHBSだけが抱える問題ではなく、どのビジネススクールでも似たり寄ったり、なのでしょう。

そういう意味で、HBS志望者だけではなく、これからビジネススクールに進もうと考えている全ての人に非常にお薦めの本です。

ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場
フィリップ・デルヴス・ブロートン
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