『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』読了

4月に東京出張した時に本屋で見つけたこの本。中国の、共産党の政治の裏側を子細に綴っていて、非常にためになります。

チャイナ・ナインとは、中国共産党を動かす(実質的に中国を動かす)、政治局常務委員のこと。チャイナ・ナインの席を巡る争い、そしてチャイナ・ナイン内での争いがどういう背景で起こり、どうなっているのか、わかりやすく書かれています。

これを読むと中国が毛沢東時代の反省を踏まえ集団指導体制に切替え、さらにチャイナ・ナイン内では民主的に物事が決まっていく、ということが分かります。外から見えている中国の姿とはかなりかけ離れています。

江沢民の時代が「先富」の時代であったとするなら、胡錦濤は「共富」の時代。鄧小平が1992年に厦門や深圳を訪れた南巡講話の時に言った「先富論」とは「先に富める者から富め」という、経済開放政策のスローガンでもあります。

しかし実際に彼が言ったのは「一部の人、一部の地域が先に豊かになることによって、最終的に共に豊かになる」という「共同富裕論」。その言葉の一部だけがクローズアップされ、中国の極端な拝金主義、格差社会を生み出してしまいました。それを胡錦濤の時代に「共富」へソフトランディングを目指してきました。

次期国家主席と目されている習近平も、多分胡錦濤の路線を引き継ぐはず。そういった背景などもしっかりと書かれており、中国の政治経済に興味がある方、または中国で生活を営んでいる方には必読書だと思います。


チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち
遠藤 誉
朝日新聞出版
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