『和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人』読了

中国ウォッチャーの安田峰俊氏の著書。中国在住、元在住の方からは「誰でも知ってるようなネタばかり」という批評もあったようですが、それは在住経験があるからこそ言えるのだろうと、読んでいて思いました。中国に住んだことのない人には中々衝撃的な話が多く、「作り話?」と思われても仕方が無い気もします。

僕自身も多少は中国国内に住んでいたし、仕事でもしょっちゅう通っていたので、その辺りの肌感覚というのは理解できます。

後半の章で、インタビューを受けた人々を通じて、「中国」と「中華人民共和国」、どちらを対象にしているのか、という問いかけをしています。これ、一緒のようで実は大きく違うのです。僕自身も安田さんの感覚に近いですが、市井の人々や歴史、文化という意味で「中国」は好きです。しかし市井の人々への圧政、汚職腐敗している官僚等を含めた中華人民共和国、というか中国共産党はキライ。

日本の中からみたら中国人=共産党、に見えるのかもしれませんが、13億人のうち中国共産党員は7千万人に過ぎません。特権階級で、誰もがなれるわけでもないのです。

そう思いながらも、本書の1章と最終章に出てくる少数民族の女性と結婚したヒロアキさんと同様、「中国共産党だからこそ、中国をまとめきれている」という感覚も捨てきれません。共産党に変わる、中国を1つの国として統括できる政党、政体は見当たらないのです。共産党による一党独裁による弊害は多数ありつつも、共産党が崩壊したら中国は三国志の時代のように内戦・内乱が頻発し、隣国の日本もとばっちりを受けかねません。

そういう意味で共産党は必要悪なのかなぁと、漠然と考えていたところにこの本を読んだので、同じような思いを持っている日本人がいるんだなぁと感じました。

和僑    農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人
安田 峰俊
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