立法院占拠の台湾の学生達について

日本のマスメディアではあまり報道されていないと聞いたので、僕の知りうる限りで簡単に解説します。これは香港に住む人々にも非常に重要な出来事なので。

元々は2010年に中国と台湾で正式に締結された『両岸経済協力枠組協議(海峡兩岸經濟合作架構協議、Economic Cooperation Framework Agreement、略称ECFA)』が発端です。これはその名の通り中台間の貿易に関する取り決めであり、FTA的な性格のもの。

しかし台湾国内ではこの取り決めが施行されることにより中国資本が続々と入ってきて台湾国内の企業が大打撃を受け、そのうちなし崩し的に「中国化」してしまう、という危機感が醸成されていました。そこで学生達が立ち上がり、台湾の国会である立法院を今月18日から占拠しているのです。今はこの学生運動を『太陽花學運』と名付けられています。

なぜ台湾では貿易協定の一種であるECFAが「中国化」という危機感になってしまったのか?それは以下のシニカルな絵で端的に表すことが出来ます。

絵の一番上は、『CEPA(中国本土・香港経済連携緊密化取決め)』によって香港が中国から優遇を受けているところ。それを見たマカオが後に続き、そして3番目、4番目が台湾になっています。香港人が書いたと思われるこの絵、ウマイ!とうなってしまいました。

香港が1997年7月1日に「中国により回収」される時に打ち出していた「一国二制度」というのは、本来台湾回収のために中国共産党が打ち出していた甘言。台湾より香港が早く回収できたので、その甘言を流用しているのです。その香港の今はどうか?

CEPA締結以降、中国からお金が流れ込み、香港経済は非常に活発になりましたが、中国資本に過度に依存し、またお金だけじゃ無く大陸から中国人達も多数訪れるようになり、香港人庶民の生活は疲弊しています。その上今の香港政府は親中国になりつつあり、まさになし崩し的に「一国二制度」が揺らぎつつある状況。

台湾はそれを見ているので、「香港のようにならないためにもECFA反対!」と声を上げているのです。

CEPAに関していえばもう少し背景を知っておく必要があります。絵の中に日付が入っていますが、この年、この時期と知って状況を直ぐに思い出せる人は香港通。大多数の日本人は既に忘れかけていると思いますが、2003年初頭から広東省~香港ではSARSによる被害が酷く、観光立国でもあり、物流ハブでもあった香港経済はヒト・モノ・カネの流れが止まり、壊滅的な状況だったのです。これを救うため、中国がCEPAを結び、大陸の中国人が中国から香港へ旅行することを緩和し始めたのです。これが諸刃の剣だったわけで。

2003年当時の政治的判断が早計だった、というのは今だから言えることで、当時は藁にもすがる思い、だったのではないでしょうか。ただその時点から現在までの香港と中国の関係を見たとき、台湾は同じ轍を踏むべきでないと思いますし、だからこそ学生達が立ち上がっているのです。

どういう結末を迎えるか分かりませんが、中国共産党の覇権主義を押さえるためにも、台湾にはここで踏ん張って欲しいなと思います。