今回の運動の原因は2017年に行われる予定の行政長官選において「真の普通選挙」が実現出来なくなったことに起因します。
2014年8月31日に中国で行われた第12期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第10回会議において、「香港特別行政区の行政長官普通選挙問題と2016年立法会選出方法に関する決定」を下しました。
香港の民主の段階的発展を推進するといいつつ、「2017年の香港行政長官選から、香港の各界代表で構成する「指名委員会」の過半数の推薦を得た人物以外、立候補できないとする案」を採択しています。つまり実質的に親中派しか立候補できないという仕組みです。
これに反発した学生を中心とした香港人達が、怒りの声を上げたわけです。中国政府は段階的に普通選挙を認めると言っていたのに、最終的には約束を反故にされたと。また親中派の行政長官が続くことで、「一国二制度」が終了する2047年6月30日以前に、なし崩し的に香港が中国に取り込まれてしまうのではないか、という恐れを抱いているのだと思います。
2047年7月1日を迎えたときどうなるか。2つの可能性があります。
1. 一国二制度を当面継続する
2. 中国に完全に統一する(時間を掛けて実施する可能性もアリ)
1であれば香港人にとっても当面安泰でしょうが、2の可能性も捨てきれません。そうなった場合、香港特別行政区が持つ香港基本法という香港における憲法、香港ドルという独自通貨が消滅することになります。
香港基本法は英国が香港に越した置き土産みたいなもので、コモン・ローをベースに香港向けにアレンジしています。その中で香港基本法23条で権利章典が差し込まれていますが、これも欧米や日本と同様、生まれながらにして持っている人間固有の権利として様々な自由が認められています。
しかしながら中国では、中華人民共和国憲法がありつつも「序章に中国は中国共産党に指導を仰ぐとされており、事実上中国共産党が憲法より上位に来る構成」となっています。また中国において各種権利・自由は生まれながらにして持っている人間固有のものではなく、中国共産党が人民に付与しているという認識なので、中国共産党に不都合な権利・自由は簡単に停止されます。『佔領中環』に反対している人達はこの辺りまで踏み込んで理解しているようには思えないので、そんな「極端な」状況になるとは思っていないか、本当によく分かっていないか、どちらかなのでしょう。まぁ『佔領中環』側もそこまで分かっているのかどうかは定かではありませんが(直接対話したことがないので)。