『砂冥宮』読了

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浅見光彦シリーズで、石川県と富山県を舞台にしたサスペンスです。

本作品のモチーフになったテーマは、『内灘闘争』。朝鮮戦争前後に起こった市民・学生運動で、アメリカ軍へ射撃場を提供するために国が内灘の一部を接収、それに反対する地元の人達と血気盛んな都市部の学生達による運動があったそうです。

本のあらすじからは離れますが、本闘争では当初は利害関係が一致した地元民と学生達が、闘争が長引くにつれて地元民達が離脱、そして学生達へ反発を強め、最後は闘争挫折となったそうです。長引けば長引くほど日常生活や仕事に支障を来した地元民達が、理想と正義を追い続ける学生達について行けなくなった、という構造だったようです。

これってまさに今の香港の雨傘革命の構図そのもの。国と時代は違えども、歴史は繰り返すということでしょうか。地元民の支持を維持しつつ、体制側へ反対闘争を続け、勝利を勝ち得ることがどれほど難しい事か。だから学生達の闘争は不毛だ、と総括するつもりは一切ありませんが、過去の失敗、挫折から何かを学び、活かすことも必要なのではないだろうかと思いました。

本の内容に戻すと、ストーリーはシンプルなので2時間で読み終えます。ただこのような闘争が地元の近くであったことを知らなかったので、知る良いきっかけになりました。

砂冥宮
砂冥宮
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内田 康夫
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