『父・金正日と私 金正男独占告白』読了

今年2月にマレーシアで起こった金正男暗殺は大きな衝撃を世界中、特に日本に与えました。それは拉致被害にあった近隣諸国として、北朝鮮という国家の異質性を改めて思い知らされたという点と、本書等によって描かれた金正男のイメージによるものだと思います。

本書は2012年に発刊されたもので、世界初のスクープ、となっています。実際そうなのかもしれませんが、北朝鮮へ強い興味を抱く国が多くないのでまぁそれは大げさすぎるかなとも思います。

それはともかく、本書では金正男と著者のメールでのやりとり、そして澳門でのインタビューで構成されていて、金正男が北朝鮮の中で異質の存在であることが描かれています。また著者による記事の結果、金正男に危機が迫ってきたことも明示されています。この時点で金正男の命運が見えていたように思えます。

そう考えると、本書が北朝鮮を刺激し、無視しておけば良かった存在から暗殺まで一気にコマを進めてしまった原因の1つである可能性は高く、ジャーナリズムはどうあるべきか、という事も考えさせられます。

父・金正日と私 金正男独占告白 (文春文庫)
五味 洋治
文藝春秋 (2016-10-07)
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